ナノポジショニング 国際単位系メートル定義

Posted in AFMNanopositioning

Sep 13th 2022

プライアーグループのブランドであるクイーンズゲイトは、高精度と高速動作を両立させた製品を、ナノポジショニングに関する課題を持ったお客様にお届けしています。例えば、シーゲート社のハードディスク検査用途や、イギリス国立物理学研究所(NPL)のように国際的な計量標準に携わるユーザー様がいらっしゃいます。

クイーンズゲイトは、このNPLに原子間力顕微鏡(AFM)用の超高精度ナノポジショニングステージをご提供しています。NPLにはイギリスの実質的な計量標準センターとして、国際単位系(SI単位系)を用いた測定運用を実現する役割があります。このため高精度計測用AFMを用いて、測定データに対する仲介標準を継続的に校正し続け、全てのAFMユーザーに提供できるようにしています。

 

メートルを定義する

2019年に行われたSI単位系の再定義に伴い、全てのSI単位はより正確で普遍的で、物理学に則したものとなりました。キログラムをはじめ、ケルビン、アンペア、モルがより正確に定義づけられました。メートルも再定義されたことは、あまり知られていないかもしれません。

1983年には、1メートルはある一定時間に光が真空中を進む距離として定義づけられました。これに基づき、計測学では光干渉法を用いて、長さ計測を行ってきました。この光干渉法は、極めて正確な計測方法であるとされてきましたが、ナノレベルでは、数百ナノの光の波長を、更に細かく分類して計測しなければならず、エラーなしで計測することは極めて難しい測定方法となっていました。

「我々には原子レベルの測定を積み重ねるボトムアップが必要でした」と、NPLの主任研究員であり、SI単位系再定義ではCCL-WG-N(Consultative Committee for Length, Working Group on dimensional Nanometrology)のリーダーを務めた、アンドリュー・ヤクート(Andrew Yacoot)氏は話します。この問題に直面し、ヤクート氏と他の研究機関から集まった研究員たちは、アボガドロ定数を表す粒子を測定する方法を試みました。この測定方法は、X線干渉法と呼ばれる、シリコン格子間を測定するような、極めて微細な測定を行うための測定方法です。「ナノレベルでのトレーサビリティ可能な測定方法として、我々はX線干渉法と、既に知られているシリコン格子間の値を組み合わせて用いました。結果として、光干渉計や他のセンサーで発生するエラーの特性判別をしながら、測定を積み重ねていくことができました。」

クイーンズゲイトは、ヤクート氏と彼のチームのX線干渉計が機能するよう、特注のナノポジショニングステージとそのコントローラを開発しました。「仕様はとても厳しいものだったと思います。動作範囲は数百ミクロンと長いものでありながら、ピコメートルの分解能を持ち、1kgの荷重を受けながら正確に動作しなければならないのですから、ステージ設計において矛盾ばかりが発生する条件であったことでしょう。」とヤクート氏は言います。

クイーンズゲイトのあるエンジニアは言います。「我々は今までの常識を打ち破る製品をNPLに納入しました。これによりNPLでは、10~20ピコ、すなわちシリコン結晶内の原子間の距離でも測定できるようになりました。とても印象的でしょう!」

 

双方向の人間関係構築

双方が歩み寄って会話を交わすことが前提条件であるからこそ、良い協力関係を作り上げていくことができるのです。ヤクート氏も彼のチームの誰にとっても、この前提条件が何よりも大切なことでした。「我々はブラックボックスとなっている高性能な製品を受け取るよりも、全ての構成部品がどのように機能するか、どのような信号がどう装置を制御しているかを深く理解することを求めています。ですから会話を重視し、積極的に情報開示をしてくれるメーカーと付き合いたいと思っていましたし、クイーンズゲイトはまさに我々が求めている会社でした。」

クイーンズゲイトの全製品は、NPLが開発した干渉計とその関連機器を使ってテストされ、性能の裏付けデータを取得しています。クイーンズゲイトにとってNPLは、いわば製品開発の外部協力者であるのです。加えてこの分野の最先端を走るNPLの専門家と仕事をすることは、次々と限界を超えることに繋がり、業界最高の精度を持つピエゾ製品メーカーとしての地位を保ち続けることができます。この公的なチームとプライベートのチームの密接な協力関係では、一方がより正確な測定をすると、もう一方はより効率的・効果的な技術や製品を開発するなど、全ての関係者にとって利益であり続けています。